今週日曜日は、我が音楽院を初めとするヴェネト州内の音楽院で選抜された
ユース・オーケストラによるプーランク作曲モノ・オペラ「声」と、
キタイェンコ指揮フェニーチェ歌劇場オーケストラによる演奏会という、
コンサート二本立ての豪華な一日(半日)でした。
前者はマリブラン劇場、後者はフェニーチェ歌劇場で行われました。
ヴェネトのユースオケ、意外といったら申し訳ないけれど
非常に上手でした。特に木管の音程が良かったのと
pの表現がうまく抑えられていたのには驚きでした。
照明などのトラブルがいくつかあって、それに伴って
崩れたところがあったと団員の友達は言っていましたが、
そんなこと私も他の友達も、まるで気付かないくらいの
フォローぶりでした。
指揮をしたのはヴェネツィア音楽院でもオケの教授をしている
ニチャーチ先生。彼は素晴らしい教師であり、音楽家でもあると
学校内でも非常に評判で、その評判どおりの
団員にも観客にもわかりやすい棒と構成でした。
さて、その後2時間ほどのインターバルを経て私は会場を移動し、
フェニーチェオケを聴きに行きました。
曲目はモーツァルト交響曲第36番「リンツ」、
G.F.ゲディーニ「二声のソプラノ、女声合唱、室内オーケストラのためのスピリチュアルコンチェルト」、
ショスタコーヴィチ交響曲第5番。
始めから終わりまで、山も谷も無く、なにかぼうっとした演奏でした。
メリハリのある演奏で聴衆を引き込むには、一貫した「パルス」が大事だと
常々思っているのですが、この演奏にはパルスがまるでなく、
そのため指揮者は同じテンポで棒を振り続けているにも関わらず
何かの拍子ですぐにテンポがゆれるのです。
そのため、曲の山へも谷へも行かない、中庸な川のよどみのような
意味のわからない演奏になっていました。
また「指揮者の振っている通りに演奏する」という特性(?)のあるフェニーチェオケに
このキタイェンコは合っていないように思いました。
指揮者の表情までは見えませんでしたが、棒は少なくとも表情のないもので、
拍こそ刻むものの特にオケの奏者にアレコレ指示するものではなかったのです。
するととたんに無表情に演奏するのがフェニーチェ。
どんなにおいしいソロパートでも、なぜか譜面をなぞるだけになります。
彼らをがっしり掴んで引っ張りあげる音楽監督が不在、
名実共に完璧迷走状態のフェニーチェ歌劇場オーケストラ。
今年はシーズンのオープニングにあたって国内外から
多数の有名指揮者を呼んで演奏会を開いたようですが、
これからどうなっていくのでしょう。。。うーむ。